磨かれる能力と櫛型人材について

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磨かれる能力と櫛型人材について

SORA EDUCATIONでは、学生同士がチームを作り、ロケットを飛ばします。しかし、プロジェクトの参加メンバー全員がロケットの設計図を書き、ロケットの部品を作っているわけではありません。なぜなら、チーム内のコントロールやロケットを飛ばすために地域住民への交渉等、様々な事柄をこなす必要があるからです。
学生たちがSORA EDUCATIONを通して学ぶことを、ひとつずつご紹介していきましょう。

作業員から技術者へ

学生たちは、「これをやりなさい、これを覚えなさい」と大人から指示され、その通りにこなすことが自分自身の仕事だと考えています。しかし、それではただの作業員。社会に出れば、ただ指示を待つ人間は「使えない」と切り捨てられてしまうこともあります。
例えば、「酸素をどうすれば作ることができますか」と学生たちに問います。そうすると、「二酸化マンガンに過酸化水素水をかける」という答えが返ってきます。そこまでが、一般的な教育で、正解なのです。続いて「二酸化マンガンや過酸化水素水はどこで手に入れますか」と尋ねると、学生たちは何も答えられなくなってしまいます。しかし、社会に必要なのは、「酸素を作るための方法を知っている人間」ではなく、「実際に酸素を作ることができる人間」なのです。社会で生きるためには、自ら考え、動くことが必要です。

ロケットを飛ばすこと。それは、技術を知っているだけでは叶いません。自分自身で「ロケットを打ち上げたい」と決定し、どう打ち上げていくか、チームの皆で目標を共有し、手を動かし進めていくしかありません。
学生たちがロケットを打ち上げたとき、指示待ち人間だった彼らは、自ら動き出せる技術者へと変貌を遂げていることでしょう。

安全に関する認識を学び、研究者へ

ロケットを飛ばす等の工学技術は、自然や社会を変革・改造する「大きな力」を持っています。そして、「力」が巨大になるに従い、自然・社会に対する悪影響を考慮する「良識」「判断力」が必要となってきます。
ロケットを飛ばすこと。それは、様々な危険を伴う行為です。ロケットを飛ばす際、実験区域という「安全ではない領域」を作り出します。しかし、実験区域を切り離しただけで、実験区域外の周囲・社会は「安心」できるのでしょうか。また、実験区域である「安全ではない領域」では、いかに「安全」を高めるのでしょうか。それぞれを考える必要があります。


安全に対する考え方として分かりやすいものを、左図を使って説明します。ボールが上にとどまっていれば安全、下に落ちてしまえば危険としましょう。黒い線の頂点で留まっていれば、ボールは落ちずに安全です。しかし、一切動かない必要があります。目まぐるしく変わっていく社会で「一切動かない」ということは、そもそもできることなのでしょうか。ここで必要となってくるのは、動かない安心を得るのではなく、動いてもいい安全な領域を作ることです。つまり、赤い線のように、どのようにして安全の範囲を広げるかが必要なのです。安全策を講じ、安全な範囲を持つこと。それが確保できない状態であれば、危険となり「力」を行使してはいけないこと。単なるSTEM教育で終わらず 、プロジェクトを通じて、安全の作り方を学んでいきます。

マネジメント能力を身に着ける

技術者・研究者としてプロジェクトに関わり経験を積んだのち、チームリーダーの任を受けます。チームリーダーの役割は、作業を分担・全体を管理しながらチームとして進めていくこと。しかし、チームリーダーだけが、仕事全体を見ていれば、プロジェクトは成功するのでしょうか。
例えば、プロジェクト開始時、仕事の総量を300と見たとしましょう。メンバーが6人の場合、仕事を50ずつ分担すれば完了できるな、と考えます。しかし、プロジェクトを進めていくと、分担した50の仕事ができていないメンバーが大半だと気が付きます。また、300だと思っていた仕事の総量が、350に変化する場合もあります。結局、足らない仕事は誰が補うことになるのでしょうか。

そもそも、「仕事」とは、正確な分量で分担できるものではありません。左図のように、長方形を6つに分けるのが、「作業」イメージです。しかし、実際の「仕事」となると、きれいに分担できるような形をしていません。各メンバーが全体を見ながら柔軟にカバーしていく必要があるのです。

SORA EDUCATIONでは、チームメンバーでロケットの絵を描くことで、「仕事」の理解と共有、作業の洗い出しを行います。自らの手で描くことで、実際の作業イメージが湧く。それでも足らない場合は、部品を抽出し更に絵を描く。そうして、見えていなかった問題点の発見、解決方法の考察を進めていきます。それらをチームメンバーと共有し全体像を把握し進めていくことで、プロジェクトを成功させることができるのです。
プロジェクトの目標設定と、リーダーとしての自プロジェクトの進め方、取り纏め方を、実践を通し学んでいく。作業の重なりや不足など、目標を全員で共有し、仕事全体をメンバーで見て、柔軟に作業の隙間を埋め、成功させる。これをチームで成し遂げたとき、各々の能力はもちろん、チームリーダーのマネジメント能力が大きく飛躍しています。

ステークホルダーとの調整能力

ハイブリッドロケットは、爆発物・高圧ガスを使わない、安全なロケット。モデルロケットは煙を使いますが、特に教育目的に開発されたロケットです。 いずれも国内で充分な打上実績があり、打上に際しての安全基準も確立しています。しかし、こういった比較的安全なロケットを飛ばすとはいえ、様々な危険が伴うことも事実。そして、無視できないのが、共同実験場の周辺地域で暮らしている方々です。

比較的安全とはいえ、ロケットを飛ばす際は地域住民と充分な議論を行う必要があります。もちろん、地域住民の方にとって、住んでいる場所の近くでロケットを飛ばされることは、大変に不安なことです 。学生の希望と、どのようにロケットを飛ばすことで「安全」を確保するかを説明し、安心していただくことが重要になってきます。共同実験運営者になれば、地域住民の方や周囲にはいかに安全を作るかを説明し、安心を提供する必要が出てきます 。内部に入り実験を行う学生には、安全な実験環境を整えるという役割があります。プロジェクト間の調整だけではなく、自治体や関係省のステークホルダーと交渉・調整する力を身に着けることは、コツコツと手間のかかることですが、今後社会の中で生きていく上で 本人の大きな力となります。

共同実験を行うためには、ロケットを打ち上げる「アクセル」、安全管理責任者の「ブレーキ」、「調整」を行う実験代表・学生運営が必要です。
SORA EDUCATIONではそれらを学生と教員、または、かつて学生として参加したOB/OGが担っています 。社会と話せる人間、審査をできる人間、様々な人材が育つ環境が揃っています。

従来教育との差で生まれる「櫛型人材とは」

多くの教育現場で教員や学生が指向しているのは 、I型人材です。何かに特化したI型人材は、専門家として求められると勘違いされがち。しかし、技術を主体とする企業であっても、本当の「専門家」は10~20%しか必要とされません。企業・社会が求める人材の多くは 、チームプロジェクトを通し、様々な経験を積み自分自身のスキルとして身に着けることで、特化した得意分野にプラスして、全体的にできることがあるT型人材です。SORA EDUCATIONでプロジェクトに参加し、他分野を専門として学んだ人と一緒に働く経験を通して、他分野にも理解のある 櫛型人材へと成長できます。 そして、活動の場を広げながら 、世界に通用するグローバル型櫛型人材になり、世界を新しく変えていける人間へと成長していきます。

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